手術後に悩まされたこと

 意識が戻ってからは、なんだか訳が分からない朦朧とした状態でベッドに寝ていました。しかし便意や小水の欲求が徐々に高まります。いつの間にか医者や看護士さんたちの姿も消え、私は一人でベッドに寝かされています。

 幸いに手術跡の痛み等はなく、トイレまでは無理すればひとりで行ける状態です。そこで体の向きを変えたり、力の入れ方を加減したりして、なんとかベッド上に起き上がり、そこからじっくりと立ち上がりフラフラしながらトイレへ。

 ところが便器に座るまでは良いのですが、肝心の便が出ません。「便秘?それとも錯覚か」と思いつつ、苦労して再びベッドに戻り、ゆっくりと寝ころびます。ところが寝ころんだ直後から便意が・・・。

 「こりやたまらん、こんどこそ出るぞ」と思いつつ、苦労してトイレに行きますが、同じことの繰り返し。

 当然ながら、足腰や肛門への負担が大きく、最後は切れ痔になってしまいました。便は出ないものの、肛門付近が切れてやたら痛い。これについては後日切れ痔用の軟膏を処方してもらいましたが、かなり辛かったです。

 またどういうわけか小水が出にくい。たまっている感じはあるのですが、トイレに行ってもすぐにその感触が消えていきます。しばらく待っていても、かすかな尿意はあるものの、尿が尿管を伝わって出てこようとする感触がありません。

 しかし出したいという気持ちはあり、一時は無理やり管を入れるしかないかとあきらめかけましたが、ある時どうせならと思い、少し多めに水を飲んでみました。

 すると1回最初ちょろっと出たことが良かったのか、それ以後は順調。どうやら我慢する癖がついてしまっていたようです。やたら出るんで、こんなにたまっていたのに出なかったのかと自分でもびっくりしました。

 そして次が腰痛。これは手術後から40日以上経過した今も続いています。回復期に入り、身体が少しずつ動くようになったものの、長期のベッド生活で背骨周辺の筋肉が衰えたようで、姿勢を維持するための筋肉が不足。

 そのため残った筋肉に負担がかかり、いくつかの筋肉の負担をカバーしようとして、別の筋肉も負担が増し、あちこちが少しずつ痛むという構造になっているようです。

 あまりに療養期間が長引いているので、今日のリハビリの先生に聞いてみたら、一か月の筋肉の減衰に対して、それを戻すには二か月以上かかるということでした。というわけで、この腰痛はこの先まだまだ続きます。

 ただ幸いにもリハビリの効果があったのか、痛みは毎日わずかずつですが軽減していきました。またそんな中、目だった後遺症というものはほどんどなく、実にラッキーだったなと思っていましたが、その後高次脳機能障害を意識し、それが1年半後の今も続いています。

 一方当初収容された部屋は個室ではなく4人部屋だったので、夜になり、なんだか情けないことになったな、と思いつつ寝ていると、朝が近づくと、隣のベッドで寝ているおじいさんの鼾やうわごと?が聞こえるようになり、「なんだかうるさいな」と思いつつ目覚めました。

 朝になると、すぐに医者が来て、体調についての問診。ただし、寝不足とカスミがかかったような思考で、的確に答えられないということを認識。どうやこれが病気の影響だということがよく分かってきました。

 言われるままに薬を飲んで、お隣のおじいさんの鼾が気になっていたので、個室に移動出来ないか相談。翌日空きが出ることが分かり、早速申し込み。

 その日はそのまま何事もなく夜となり、味もそっけもない病院の夕食を食べベッドへ。しかしこのころから足のふくらはぎに異常なしびれを感じるようになりました。

 病気の再発か?と不安になりましたが、どうやらベッドから降りて車いすに座ったり、単なるトイレに行ったりする動作が、足の筋肉への負担となり、筋肉痛になってしまったようです。

 湿布薬をもらってそれを貼ったところ症状が軽減、そのことで逆に筋肉痛だったんだと確信しました。

 しかしほんの3日間ほど、全く足を使わなかったら、あっという間に筋肉量が減少したのはかなり衝撃的でした。またその後体重を計ってみたら、予想外の6kg減。人間の体は、使わない筋肉はどんどん落ちるということがよく分かりました。 

 ちなみに手術後寝たきりになっていた期間は、最近になって1週間程度だったということが、家族の話で分かってきました。


腰痛の悪化



第1章 発症から退院まで


トップページへ